【最新情報】PFASって何?傘製品への影響や今後の動向について解説します

皆様、こんにちは!いつもアンベル株式会社のブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。

 

近年、環境問題への関心が高まる中、「PFAS(有機フッ素化合物)」という言葉を耳にする機会が増えてきたのではないでしょうか。特に、私たちの身近な製品にも関わる可能性があり、気になっている方もいらっしゃるかと思います。

 

そこで今回は、先日お客様からいただいたPFASに関するお問い合わせを元に、よくある疑問とその回答をFAQ形式でまとめ、ブログ記事として分かりやすく解説いたします。

Q1: PFASはPFOAやPFHxSと同じ仲間?炭素の数で何が違うの?

「PFASって、以前話題になったPFOAやPFHxSと同じものなの?C8とかC6とか言われているけど、どういう意味?」といった疑問をお持ちの方もいるかもしれません。

PFOA(ペルフルオロオクタン酸)やPFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)は、どちらもPFAS(有機フッ素化合物)という大きなグループに属する仲間です。PFASは、フッ素原子を持つ有機化合物の総称で、その種類は非常に多岐にわたります。

 

炭素の数(Cの数)は、PFASを分類する際の一つの指標となります。撥水性などの機能を持たせるために利用され、炭素原子の鎖の長さによって特性が異なることがあります。

  • C8: PFOAは代表的なC8のPFASです。
  • C6: PFHxSは代表的なC6のPFASです。
  • C4など: これら以外にも、C4といったより短い鎖長のPFASも存在します。さらに短い鎖長や、異なる構造を持つPFASも数多くあります。重要なのは、フッ素原子を持っているという点です。
  • C0: ご質問にある「C0」は、フッ素原子を全く含まない物質を指しますので、PFASには該当しません。PFASを完全に排除するということは、フッ素化合物そのものを使用しない素材や技術を選ぶことになります。フッ素フリーとも呼びます。

Q2: 今まで傘はPFASの規制対象外だったけど、これからも変わらないの?

「うちの扱っている傘は、今まで特に規制されていなかったと思うけど、今後も大丈夫なの?」と心配されている方もいらっしゃるかもしれません。

PFASに関する規制は、世界各国や地域、そして規制の対象となるPFASの種類によって状況が異なります。

現在、国際的にはPFOA、PFOS、PFHxSといった特定のPFASについては、製造・使用・輸入の禁止や制限の動きが広がっており、日本でもこれらの物質は化学物質審査規制法(化審法)により規制されています。

 

しかし、現時点では、傘製品そのものが特定の法律で全面的に禁止されているわけではありません

ただし、法的な規制がない場合でも、環境意識の高まりや、PFASの安全性に対する懸念から、企業が自主的にPFASフリーの製品を取り扱う方針に転換する動きが活発になっています。そのため、法規制の対象外であっても、市場の動向としてPFASを含む製品が扱いにくくなる可能性は十分に考えられます。

 

<補足>現在、中国の傘生地メーカーにヒアリング中ですが、C8を「引き続き生産可能」というメーカーもあり、「C8はもう生産しない、C6に切り替えた」というメーカーもあり情報が錯綜している状況です。

Q3: 傘の業界では、もうPFASフリーの流れが主流になっているの?

「他の傘メーカーや工場は、もうPFASフリーに移行しているんだろうか?」と、業界の動向を気にされている方もいるでしょう。傘メーカーや工場各社においても、PFASフリー化への動きは着実に進んでいます。

環境への配慮や、PFASの安全性に対する消費者の関心の高まりを受け、多くの企業が自主的にPFASの使用を減らす、方向へと舵を切っています。

 

特に、環境中に長く残留し、生物にも蓄積しやすいとされるC8のような長鎖のPFASから、より分解されやすいとされるC6などの短鎖PFASや、フッ素を全く含まない撥水技術への移行が進んでいます。

「C6メイン」という状況になっているかどうかは、個々のメーカーや工場の状況によって異なりますが、PFASフリー化は傘業界全体として無視できない今後の大きなトレンドと言えるでしょう。すでに完全にPFASフリーの製品に切り替えているブランドも出てきています。

Q4: 低価格帯の商品は、今後どう対応していくんだろう?

「低価格の傘を扱っているメーカーは、コスト面でPFASフリーへの対応が難しそうだけど、どうなっていくんだろう?」と、今後の動向を懸念されている方もいるかもしれません。現時点ではっきりとした情報はありませんが、一般的には以下のような動きが考えられます。

  • 段階的なPFAS削減: まずは規制の対象となっているPFASから、より安価な代替物質への切り替えを進め、徐々に他のPFASも削減していく可能性があります。
  • より安価なPFASフリー技術の導入: 技術革新によって、低コストでPFASフリーの撥水性を実現できる新しい技術が登場するのを待ち、導入を検討するかもしれません。
  • 製品価格への転嫁: PFASフリー化によるコスト増加の一部または全部を、製品の価格に反映させることを検討する可能性もあります。ただし、価格競争力を維持する必要があるため、慎重な判断が求められるでしょう。
  • 素材や品質の見直し: PFASフリー化と同時に、傘の他の素材や品質を見直すことで、コスト増を相殺しようとする動きも考えられます。
  • 市場の動向を注視: 他の低価格帯メーカーの動向や、消費者のPFASフリー製品へのニーズの高まりを注視しながら、今後の対応を検討していくと考えられます。

弊社としても、関連業界の情報を引き続き収集し、皆様にご提供できるよう努めてまいります。

PFASフリー化に伴う可能性のあるリスクについて

PFAS(有機フッ素化合物)に関するFAQをお届けしましたが、PFASフリー化を進めていく上で、製造段階や製品の機能面で懸念される可能性のあるリスクについて自分の経験をふまえまとめます。

 

初期の撥水性の低下

従来のPFASを使用した撥水加工と比較して、PFASフリーの撥水加工では、製品初期の撥水性がわずかに低下する可能性があります。例えば、現在初期撥水性が4級相当の製品であっても、PFASフリーの加工では3級相当になる場合が考えられます。これは、使用する撥水剤の特性によるもので、より高い撥水性を得るためには、新たな技術開発や加工方法の工夫が必要となります。

 

撥水効果の持続性低下

PFASフリーの撥水加工は、従来のPFAS加工に比べて、撥水の持続性が短くなる傾向があるかもしれません。数回の使用で撥水効果が低下し、水を弾きにくくなる場合があります。これは、PFASが持つ特有の耐久性や安定性に起因するもので、PFASフリーの素材で同等の持続性を実現するためには、素材や加工技術の進化が求められます。

 

コストアップ

一般的に、PFASフリーの撥水剤や加工技術は、従来のPFASを使用したものと比較してコストが高くなる傾向があります。これは、新たな原料の開発や製造プロセスの導入、そして性能維持のための研究開発費などが影響するためです。そのため、PFASフリー製品への移行は、製品の価格に影響を与える可能性があります。

 

生地への水の染み込み

PFASは、優れた撥水性だけでなく、撥油性も有しています。PFASフリーの撥水加工では、撥水性は確保できるものの、撥油性が十分に得られない場合があります。その結果、雨水などが生地表面に留まらず、染み込みやすくなる可能性が考えられます。特に、長時間の雨天での使用においては、注意が必要となる場合があります。

 

生産中の油汚れの付着

PFASは撥油性も持つため、従来の加工では比較的防ぐことができていた生産工程における油汚れが、PFASフリーの生地には付着しやすくなる可能性があります。これは、生地の品質管理において、より細やかな注意が必要となることを意味します。

リスクへの対応と今後の展望

PFASフリー化は、環境負荷の低減という大きなメリットがある一方で、上記のようなリスクも伴います。これらのリスクを最小限に抑え、より高品質で持続可能な製品を提供するために、私たちは以下の点に取り組んでまいります。

  • 新たな撥水技術・素材の研究開発: より初期性能が高く、持続性のあるPFASフリーの撥水技術や素材の開発を積極的に進めます。
  • 品質管理の徹底: 生産工程における品質管理をより一層強化し、油汚れの付着防止に努めます。
  • コスト効率化の追求: 製造プロセスの改善や、よりコスト効率の良いPFASフリー素材の探索を行い、価格への影響を最小限に抑える努力を継続します。
  • 情報開示とコミュニケーション: PFASフリー製品の特性について、お客様に正確な情報を提供し、ご理解いただけるよう努めます。

PFASフリーへの移行は、決して容易な道のりではありませんが、持続可能な社会の実現に向けて、重要な取り組みであると認識しています。今後も技術革新を追求し、より良い製品をお届けできるよう努めてまいりますので、ご理解とご協力をお願い申し上げます。


【免責事項】本ブログに掲載する情報は、現時点における一般的な情報や弊社の見解に基づき作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。特に、法規制や業界動向に関する情報は常に変動する可能性があり、最新の情報と異なる場合があります。本ブログの情報は参考としてご利用いただき、最終的な判断はご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。