傘の撥水剤、今と未来、環境とPFCフリーの最新情報

傘生地の撥水剤は、近年、環境や人体への影響が懸念されることから、大きな転換期を迎えています。

現状

従来、傘生地の撥水剤には、フッ素系撥水剤(PFC)が広く使用されていました。

PFCは優れた撥水性を持つ一方、環境中に残留しやすく、人体への蓄積性も指摘されています。特に、PFOA(パーフルオロオクタン酸)やPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)といった物質は、ストックホルム条約で規制対象となっており、使用が制限されています。

 

このため、傘業界ではPFCフリーの撥水剤への移行が進んでいます。

主な代替物質としては、以下のものが挙げられます。

  • C6撥水剤: 従来のC8撥水剤に比べて炭素鎖が短く、環境負荷が低いとされています。
  • C4撥水剤: さらに炭素鎖が短い撥水剤で、より環境負荷が低いと考えられています。
  • C0撥水剤: 有機フッ素化合物を含まない撥水剤で、環境負荷の低減が期待されています。
  • シリコン系撥水剤: 有機フッ素化合物を使用しない撥水剤の一種で、撥水性と耐久性に優れています。

※現状、中国メーカーではC8、C6が主流で、台湾生地メーカーはC0に切り替えています。

 

今後

環境意識の高まりや規制強化の流れから、PFCフリーの撥水剤はますます普及していくと考えられます。特に、C0撥水剤は環境負荷が最も低いことから、今後の主流となる可能性があります。

 

しかし、PFCフリーの撥水剤は、従来のPFC撥水剤に比べて撥水性や耐久性が劣る場合があり、コストも高いという課題があります。そのため、各メーカーは、性能向上やコストダウンに向けた研究開発を進めています。

 

また、消費者側も、環境への影響を考慮して、PFCフリーの撥水剤を使用した傘を選ぶことが重要になります。傘を購入する際には、撥水剤の種類を確認するなど、環境への配慮を意識した選択をするようにしましょう。

 

補足

  • 撥水剤の規制は、世界的に強化される傾向にあります。
  • 傘生地の撥水性には、撥水剤の種類だけでなく、生地の素材や加工方法も影響します。
  • 環境負荷の低い撥水剤の開発は、持続可能な社会の実現に向けて重要な課題です。

傘生地の撥水剤は、環境や人体への影響を考慮しながら、より安全で高性能なものが求められています。今後、技術革新や消費者意識の変化によって、撥水剤はさらに進化していくことが期待されます。

 

フッ素系撥水剤に関する法律

撥水剤、特にフッ素系撥水剤に関する日本の最新の法律は以下の通りです。

 

化学物質審査規制法(化審法)

化審法は、人の健康や環境を保護するために、化学物質の製造、輸入、使用などを規制する法律です。

この法律に基づき、以下のフッ素系化合物が規制されています。

 

  • PFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)
    • 2010年4月に第一種特定化学物質に指定され、製造・輸入・使用等が原則禁止されています。
  • PFOA(パーフルオロオクタン酸)
    • 2021年10月に第一種特定化学物質に指定され、製造・輸入・使用等が原則禁止されています。
  • PFHxS(パーフルオロヘキサンスルホン酸)
    • 2024年2月に第一種特定化学物質に指定され、製造・輸入等が原則禁止されています。

 

傘への適用について

現状では、傘はこれらの法律の規制対象外となっています。

しかし、経済産業省は、今後、法律が改正され傘が規制対象になる可能性も示唆しています。

 

今後の動向

フッ素系化合物による環境汚染や健康被害が懸念されていることから、規制は今後さらに強化される可能性があります。特に、PFAS(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)と呼ばれる物質群全体への規制強化が検討されています。

 

傘業界では、これらの規制に対応するため、PFCフリーの撥水剤への移行が進んでいます。

消費者も、環境や健康への影響を考慮し、PFCフリーの傘を選ぶ傾向が強まると思われます。

 

また台湾の生地メーカーが全面的にC0に切り替える動きがあることから、2025年秋冬向けの傘から、業界的にも徐々にC0へ切り替わる可能性があります。

 

参考情報

この情報は最新の情報に基づいていますが、法律や規制は変更される可能性があります。

最新の情報については、関係省庁のウェブサイトなどを参照してください。