日傘の遮熱性能表示、JIS法とQTEC法を使い分けよう

気象庁のデータによると、2013年(10年前)の東京における猛暑日と真夏日の日数は以下の通りです。

  • 猛暑日:4日
  • 真夏日:57日

これを、2023年のデータと比較してみましょう。

  • 猛暑日:22日
  • 真夏日:88日

ご覧の通り、猛暑日は5.5倍に、真夏日は約1.5倍に増加しています。

 

<猛暑日5.5倍、真夏日1.5倍に増加>
<猛暑日5.5倍、真夏日1.5倍に増加>

 

このように暑い日が増加傾向にあり、日傘や晴雨兼用傘には「遮熱性」がより求められるようになりました。

昨今、遮光100%が特別なものではなくなってきたため、これからメーカー間では「遮熱性」における機能開発が、より活発になるのではないかと私は推測しています。

 

ただ、遮熱性の試験について、2種類あることをご存知でしたでしょうか?

業界の方でも意外と知らない方が多いので、以下に違いをまとめてみました。

傘の遮熱性の評価

傘の遮熱性を評価する試験には、大きく分けて2つの方法があります。

 

JIS法(JIS L 1951)

JIS法では、傘の生地のみを試験対象とします。

生地の遮熱性は、生地に太陽光を照射した際に透過する熱量を測定することで評価されます。

具体的には、生地の下に設置した熱線受光体の温度上昇を測定し、その値から遮熱率を算出します。

※ほとんどの方が認識している、遮熱性の検査方法だと思います。

 

QTEC法

QTEC法では、傘の製品そのものを試験対象とします。

傘を真上から人工太陽照明灯で照射し、真下に設置した熱線受光体の温度を測定します。

そして、傘をセットせずに行った空試験の結果から「遮熱効果率(%)」を算出します。

遮熱効果率(%)は、傘を用いたことで放射熱を何パーセント遮れたかを表す指標です。

2つの方法の違い

項目 JIS法 QTEC法
試験対象 生地のみ
製品そのもの
光源
人工太陽照明灯
人工太陽照明灯

測定方法

熱線受光体の温度
熱線受光体の温度
評価指標
遮熱率
遮熱効果率

JIS法は、生地の遮熱性を評価するのに対し、QTEC法は傘の遮熱性をより実使用に近い状態で評価することができます。

どちらの方法が良いか

どちらの方法が良いかは、試験の目的によります。

生地の遮熱性のみを評価したい場合はJIS法で十分です。

傘全体の遮熱性を評価したい場合は、QTEC法の方が適しています。

 

QTEC法は傘の形状や構造も考慮した評価ができるため、二重張りや蛙張りなど、生地とフレームの組み合わせで遮熱効果を発揮する傘の場合、QTEC法が唯一の選択肢となるでしょう。

消費者に分かりやすい遮熱性能の表示方法

仮にJIS法で試験して、遮熱率50%という結果が出たとします。

この同じ生地を使った製品をQTEC法で試験した場合、遮熱効果率として85%程度の数値が出る可能性があります。

これはあくまで私の経験ですが、QTEC法では一般的にJIS法よりも高い遮熱効果率が得られます。

 

そのため、メーカーや販売者が遮熱性能の数値を表示する際は、消費者がその数値を正しく理解できるように、JIS法やQTEC法など、どの試験方法で測定したのか、遮熱率なのか遮熱効果率なのかを明記する必要があるでしょう。