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傘業界の方であれば、すでにご存知の方が多いと思いますが、PFASの一種である「PFHxS」ですが、2024年2月に第一種特定化学物質に指定され、国内での製造や輸入などが規制されます。
これに関して、色々お問い合わせいただいておりますので、問題点などを整理していきたいと思います。
結論
現時点で傘は規制の対象外です。
レインコートは規制の対象です。
国内での製造や輸入が規制されるものであり、すでに輸入済みの商品は販売を継続して問題ありません。
以下で状況を整理していきます。
有機フッ素化合物 PFASとは
PFASとは4730種を超える有機フッ素化合物の総称。自然界で分解しにくく水などに蓄積することがわかったほか、人への毒性も指摘されており、国際条約で廃絶や使用制限しています。PFASのうち「PFOS」と「PFOA」は水や油をはじき、熱に対し安定的な特性があることから、消火剤やフライパンのコーティング剤などに使われてきました。
すべてのPFASが有害物質ではなく、その内有害性があるとして「PFOS」と「PFOA」の2種類はすでに輸入や製造が禁止されていて、「PFHxS」が3つめの有害物質として規制されることになりました。
これは突然決定したことではなく、2022年6月にストックホルム条約(POPs条約)における新たな廃絶対象物質として追加することで決定していました。
有害性が指摘されている物質 |
規制の施行 |
|
PFAS (有機フッ素化合物の総称) |
PFOS | 2010年11月 |
PFOA | 2021年10月 | |
PFHxS | 2024年2月 |
C8、C6、C0の違い
撥水のランクは、C8、C6、C0、などの業界用語があります。
C8:パーフルオロオクチル基(C8F17基)を有するフッ素化合物
⇒〔その代謝物〕パーフルオロオクタン酸(PFOA)
C6:パーフルオロヘキシル基(C6F13基)を有するフッ素化合物
⇒〔その代謝物〕パーフルオロヘキサン酸(PFHxA)
C4:パーフルオロブチル基(C4F9基)を有するフッ素化合物
⇒〔その代謝物〕パーフルオロブタン酸(PFBA)
Cは PFC(=Perfluorocarbon パーフルオロカーボン)のCarbonを取って付けられた名称だと思われます。
8や6などの数値は炭素原子(Carbon)の数から付けられた名称で、数値が小さいほど安全性が高いとされています。
C0とは有機フッ素化合物を含まない撥水になります。
現状において、有害物質を含まない撥水生地を手配する場合は、C4、もしくはC0を指定して発注することになります。
※PFCは PFASの名称で呼ばれることがあります。
これからどうなるのか?
ストックホルム条約には、傘生地の生産や撥水加工をする現場の中国や台湾も加盟しています。
ということは、製造も輸入も禁止ですので、今後は基本的に有害物質を含むものは輸入されないはずです。
ただし世界的に傘の撥水については、従来のC8で輸入も輸出もできており、C8やC6の撥水剤が生産中止になるという話も出てないです。
これからどうなるのか?という問いに対しては「正直わからない」というのが答えです。
とはいえ、有害物質はなくすべきです。
一方で有害物質を減らすと撥水性が落ちるデメリットがあり、また有機フッ素化合物を含まない撥水は今のところコスト高なので、どこでバランスを取るのかは、要検討であります。
※私は撥水や法律の専門家ではありません。誤った認識でブログを書いている場合があります。諸々の専門的な調査は自己責任でお願いします。