新型コロナウイルスの影響だとは思いますが、「抗菌加工はできますか?」というお問い合わせが最近は増えています。「清潔」に対する見直しがされ、数年前にあったような抗菌ブームが再来するかもしれません。
結論としては抗菌加工は可能です。
ただ私は抗菌の専門家ではないので、現時点で私の理解していることを書いていきます。
傘に可能な抗菌加工とは
現在の技術では、傘のハンドルなどのプラスチック類に抗菌加工が可能で、「プラスチック成形時に抗菌剤を混ぜ射出する」という方法が一般的です。
合皮や木材、アクリルなどには、今のところ抗菌加工はできないというのが私の認識ですが、素材メーカーさんによってはできる可能性もあると思います。ただ製法としてプラスチック素材はそのものに抗菌剤を練り込むことができますが、合皮や木材については表面からの塗布という方法になるので、抗菌剤が剥離したりして、抗菌機能の永続性は低いと思います。
抗菌の試験方法
試験方法は統一された基準があり、日本工業規格(JIS)に準じます。
試験は菌を培養させ実施するので、平面なプラスチック板が必要となり、5cm四方以上の大きさ、厚み1cm以下でなければ試験ができません。抗菌活性値が2.0以上が合格となり、黄色ぶどう球菌、大腸菌の2種類を調べることができます。
試験方法 | JIS Z 2801 |
抗菌性能基準 | 抗菌活性値2.0以上 |
試験菌 | ①黄色ぶどう球菌 ②大腸菌 |
試料 | 5cm四方以上、厚み1cm以下、抗菌加工済のプラスチック板 |
詳しくは試験機関のホームページで確認をしてください。
(参考:ボーケン 抗菌性 非繊維、JIS Z 2801 )
懸念されること
2つありますがひとつは、抗菌剤そのものに色がついていますので、ハンドルの色を白にした場合、「少しくすんだ白」で仕上がる可能性があります。これらは量産前に色確認が必要になります。
※技術が進歩して、無色透明な抗菌剤があるかもしれません。
もうひとつは、上記の試験方法にも書いたように、5cm四方以上、厚み1cm以下の抗菌加工済のプラスチック板が必要になります。傘のパーツでは平面な面積が小さいので菌の培養試験ができません。
生地の抗菌は?
生地の抗菌については現在確認中です。
生地に関しては、傘の使用後にぬれたまま傘を閉じていると、嫌な臭いがする場合がありますので、これを抑制できる生地があれば最高ですね。情報分かり次第、ブログを更新します。
2020/09/20 更新
現在、検査会社の抗菌試験が大変込み合っており、検査結果が出るまで2-3ヶ月かかるとのことです。
Yoshihiro Tsujino / Amvel inc. CEO
1992年、創業明治17年の傘の老舗企業へ入社。営業→企画へとキャリアを積み、「業界初の安全自動開閉傘」や「風に負けない傘」などを開発し耐風傘ブームを作る。その後、役員へと歩むものの、2016年2月に突然の倒産。2016年4月にアンベル株式会社を創業し、「超軽量折りたたみ傘」などの高機能傘の開発に邁進している。
一般社団法人日本日傘男子協会の理事も務める。